DISEASE

病名から探す

肺炎(市中肺炎・誤嚥性肺炎)

肺炎の定義

肺実質に起こった急性の感染による炎症

症状

肺炎は、肺に炎症が起こることで 「酸素をうまく取り込めなくなる」病気 です。
発熱・咳・息苦しさなどの症状が続く場合、重症化することもあり、早めの受診・検査がとても重要です。

肺炎の分類

  1. 市中肺炎(CAP) 市中で生活している人に発症する肺炎
  2. 院内肺炎(HAP) 入院後48時間以上経過してから発症した肺炎
  3. 人工呼吸器関連肺炎(VAP) 気管挿管・人工呼吸開始後48時間以降に発生したHAP​

一般生活でよくみられる肺炎は2種類あります。

  1. 市中肺炎(一般的な肺炎)
  2. 誤嚥性肺炎(高齢者に多く、気づきにくい肺炎)

市中肺炎(一般的に多いタイプ)

市中肺炎は、普段の生活の中でかかるもっとも一般的な肺炎で、風邪やウイルス感染をきっかけに発症します。

市中肺炎の主な症状

  • 38℃以上の発熱
  • 咳・膿性痰(黄色や緑色)
  • 寒気や震え
  • 胸の痛み(深呼吸で悪化)
  • 強い倦怠感

健康な若い方でも発症することがあり、症状が長引く場合は細菌性肺炎に進行している可能性もあるため、胸部レントゲンや血液検査での評価が必要です。

誤嚥性肺炎(気づきにくいが危険なタイプ)

誤嚥性肺炎は、特に 高齢者や持病のある方に多い肺炎 で、食べ物・唾液・胃内容物が誤って気管に入り、肺に炎症が起こることで発症します。誤嚥性肺炎は 市中肺炎と症状が異なり、気づかれにくい のが最大の問題です。

誤嚥性肺炎が危険な理由

  • 高齢者に非常に多い
  • むせない誤嚥(不顕性誤嚥) が多く、本人は自覚しにくい
  • 高熱が出ない → 微熱・平熱でも肺炎のことがある
  • 食欲低下・倦怠感だけの「非典型症状」で見逃されやすい
  • 再発しやすい(嚥下機能の低下が根本)
  • 家族の“気づき”が受診につながることが多い

誤嚥のサイン(ご家族が気づきやすいポイント)

  • 食事中・食後にむせる・咳き込む
  • 食後に声がかすれる
  • 夜間の咳が多い
  • なんとなく元気がない、食欲が落ちている
  • 何度も肺炎を繰り返す

誤嚥性肺炎は、症状が軽く見えても放置すると命に関わる状態に悪化することがあるため、早めの専門的な評価が必要です。

原因

肺炎は、外部からの病原体によるもの(市中肺炎)と、体の機能的な問題によるもの(誤嚥性肺炎)の二つのメカニズムで発生します。

市中肺炎

市中肺炎はどう起きる?

市中肺炎(CAP)は、普段の生活圏で感染するもっとも一般的な肺炎です。多くの場合、風邪や上気道感染がきっかけとなり、細菌・ウイルス・非定型病原体などが肺に入り込み炎症を起こします。

主な原因

  • 細菌性肺炎: 最も多い原因で、代表的なのは肺炎球菌・インフルエンザ菌。強い炎症を起こしやすく、高熱や膿性痰が特徴です。
  • 非定型肺炎(マイコプラズマ・クラミジアなど): 若い人にも多く、乾いた咳や長引く発熱が特徴です。
  • ウイルス性肺炎: インフルエンザ・RSウイルスなどが原因となり、ウイルス感染後に細菌性肺炎を続発する場合もあります。

つまり、市中肺炎の原因は多様であり、原因病原体によって症状や治療が異なるため、早期の診断が重要です。

【リスクファクター】— 市中肺炎になりやすくなる背景

市中肺炎は誰でもかかる可能性がありますが、以下の要因をもつ方は発症・重症化リスクが高くなります。

  • 1. 体の抵抗力(免疫力)の低下
    • 高齢(特に65歳以上)
    • 過労・睡眠不足
    • 栄養不良
    • 糖尿病・腎臓病などの慢性疾患
  • 2. 呼吸器系の基礎疾患
    • COPD(慢性閉塞性肺疾患)
    • 喘息
    • 慢性気管支炎
    • 喫煙歴(気道の防御機能が低下し、細菌が肺に侵入しやすくなります)
  • 3. 生活環境・季節性の影響
    • 冬季(インフルエンザ流行時期)
    • 集団生活(施設・職場・学校)
    • 乾燥した環境(のどの防御機能が低下)
  • 4. 免疫機能を抑える薬の使用
    • ステロイド
    • 免疫抑制薬
    • がん治療中

誤嚥性肺炎

何が起きて肺炎になるのか

誤嚥性肺炎は、口腔内の常在菌を含んだ唾液や、飲食物が誤って気道(気管)に入り、肺に炎症が起こることで発症します。主な原因は「嚥下反射(飲み込む力)の低下」で、本来であれば食道に送られるはずのものが、誤って気管側に入ってしまうことが引き金になります。

  • 嚥下機能の低下(誤嚥の直接的原因)
  • 口腔内の細菌が気道へ流入すること
  • 不顕性誤嚥(むせずに誤嚥する)でも発症する

【リスクファクター】— 誤嚥性肺炎を起こしやすくする背景や条件

  • 医学的なリスク
    • 嚥下障害(最も重要なリスク): 加齢、脳卒中の後遺症、パーキンソン病などの神経疾患で嚥下機能が低下する。
    • 神経・筋疾患: 脳卒中後の麻痺、パーキンソン病、認知症などで誤嚥の危険性が増す。
  • 生活習慣・環境のリスク
    • 口腔衛生の悪化: 細菌数が増えると、誤嚥した際に肺炎を起こしやすくなる(口腔ケアは予防効果が非常に高い)。
    • 喫煙: 気道の浄化作用が低下し、細菌が付着しやすくなる。
    • 臥床・寝たきり状態: 嚥下反射と咳の反射が低下し、誤嚥しやすくなる。
  • 身体的・加齢による変化
    • 加齢による嚥下筋の弱り
    • 咳反射の鈍化

診断

肺炎の診断では、症状の確認(問診)に加え、炎症の程度、肺の炎症像を客観的に評価し、適切な治療方針を決定します。

肺炎の診断基準

  • 胸部画像検査における新たな浸潤影​

かつ

  • 肺炎に合致する症状(発熱,咳嗽,喀痰,呼吸困難etc)​

診断は、主に以下の方法を組み合わせて行います。

  • 問診・身体診察: 症状を詳しくお伺いし、聴診や呼吸状態の評価を行います。
  • 胸部X線検査(レントゲン): 肺炎の確定診断に最も重要な検査です。肺に浸潤影(影)の有無やその広がりを確認します。
  • 血液検査:
    • 炎症マーカー: 白血球数やCRP(C反応性タンパク)を測定し、炎症の程度を評価します。
    • プロカルシトニン (Procalcitonin, PCT): 細菌性感染症の診断を支援する専門的なマーカーであり、抗菌薬の適正使用の判断に役立ちます。
  • 喀痰検査・尿検査: 原因菌を特定することで、より効果的な治療薬を選択するのに役立てます。
  • パルスオキシメトリー: 血液中の酸素飽和度(SpO2)を測定し、呼吸不全の兆候がないかを迅速に評価します。

特に当院では、問診と身体診察に加え、胸部X線検査(レントゲン)や専門的な血液検査を組み合わせることで、迅速かつ正確な診断と重症度判定を行い、最適な治療方針を決定します。

治療

肺炎の治療は、原因となっている病原体を標的とする薬物療法と全身管理が中心です。特に誤嚥性肺炎においては、再発防止のための非薬物療法が極めて重要であり、多角的なアプローチが求められます。

市中肺炎の治療:ガイドラインに基づいた抗菌薬選択

軽症で外来治療が可能とされた市中肺炎に対しては、最新のガイドラインに準拠した経口抗菌薬を投与します。

  • 標準的な抗菌薬選択: 細菌性肺炎が疑われる場合、ガイドラインに基づいた抗菌薬が投与されます。
  • 非定型病原体が疑われる場合: マイコプラズマなど非定型病原体を標的とする抗菌薬が使用されます。不必要な広域抗菌薬の使用を避けることで、耐性菌の発生を抑制します。
  • 服用継続の重要性: 症状が改善しても、自己判断で服用を中止すると、再発したり、耐性菌が発生したりする原因となります。医師の指示通り、最後まで抗菌薬を服用しきることが重要です。

誤嚥性肺炎の治療と再発予防:多角的アプローチ

誤嚥性肺炎は口腔内の細菌が原因となるため、嫌気性菌にも有効な抗菌薬が選択されます。しかし、根本原因である嚥下機能障害が残る限り再発のリスクが高いため、急性期治療後の再発予防策が治療の中心となります。

非薬物療法と予防策(再発防止の鍵)

誤嚥性肺炎の再発防止には、多職種連携による機能改善アプローチが必須です。

  • 徹底した口腔ケア: 口腔内の細菌数を減らすことは、誤嚥性肺炎の発症を予防するための最も有望な手段です。毎食後や就寝前、徹底的に口腔内を清潔に保つことが重要です。
  • 嚥下リハビリテーション: 嚥下障害の評価に基づき、嚥下体操や口腔体操などによる機能訓練が行われます。
  • 正しい食事姿勢の確保: 食事中は背筋を伸ばし深く座り、顎を軽く引く姿勢を取ることで、食べ物が誤って気管へ流れ込むのを防ぎます。

肺炎は早期の正確な診断と、原因に応じた適切な治療開始が予後を大きく左右する疾患です。呼吸器内科による専門的な診療においては、A-DROPスコアを用いた重症度判定、専門的な血液検査に基づき、入院が必要な場合は連携医療機関への紹介が行われ、軽症の場合はガイドラインに沿った最適な外来治療が提供されます。誤嚥性肺炎の予防、嚥下機能の評価、生活指導については、専門医にご相談のうえ、継続的なフォローアップを受けることが重要です。