COLUMN

院長コラム
2026.01.13

加熱式タバコなら肺に悪くない?専門医の見解

「加熱式タバコは安全」という誤解

加熱式タバコの普及に伴い、「紙巻きタバコより害が少ない」「肺には悪くない」と考える方が増えています。しかし、これは正確な情報とは言えません。加熱式タバコは燃焼させないだけで、有害物質を完全に除去できるわけではなく、健康リスクがゼロになるわけではありません。

加熱式タバコと紙巻きタバコの違い

紙巻きタバコはタバコ葉を約800〜900℃で燃焼させるのに対し、加熱式タバコは200〜350℃でタバコ葉を加熱して蒸気(エアロゾル)を発生させます。燃焼が起きないため、タールの生成量は大幅に減少しますが、タール以外にもさまざまな有害化学物質が発生することがわかっています。

加熱式タバコのエアロゾルからは、依存性の主因であるニコチンがほぼ紙巻きと同等量含まれているほか、ホルムアルデヒドやアクロレインといった発がん性・刺激性のある物質も検出されています。一部の有害物質は確かに減少していますが、新たに生成される化学物質も存在し、長期的な安全性は十分に証明されていません。

【参考】タバコ製品の比較表

項目紙巻きタバコ加熱式タバコ電子タバコ(VAPE)
ニコチン
タール(燃焼残留物)

※電子タバコは、日本ではニコチン入りの液体(リキッド)の販売が規制されているため「✖」としています。

肺への影響に関する最新研究

加熱式タバコが肺に与える影響について、近年さまざまな研究が進められています。動物実験や細胞実験では、加熱式タバコのエアロゾルが気道の炎症反応を引き起こすことが確認されており、ヒトを対象とした研究でも呼吸機能への悪影響を示唆するデータが報告されています。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息をお持ちの方にとっては、加熱式タバコであっても症状悪化のリスクがあります。ニコチンそのものが気道の過敏性を高める作用を持つため、「加熱式に切り替えれば大丈夫」とは言えない状況です。

日本呼吸器学会の公式見解

日本呼吸器学会は、加熱式タバコについて「紙巻きタバコと同様に健康被害を引き起こす可能性がある」との見解を示しています。同学会は、加熱式タバコを含むすべてのタバコ製品の使用を推奨しない立場であり、受動喫煙についても紙巻きタバコと同様に対策が必要としています。

「減煙」ではなく「禁煙」が大切

紙巻きタバコから加熱式タバコに切り替えることを「減煙」と捉える方もいますが、ニコチン依存が継続する限り喫煙習慣から抜け出すことはできません。むしろ、加熱式タバコへの切り替えが禁煙への意欲を低下させるという指摘もあります。健康のためには、すべてのタバコ製品を断つ「完全禁煙」を目指すことが重要です。

禁煙外来では加熱式タバコの使用者も治療対象となります。ニコチン依存症と診断されれば保険適用で禁煙治療を受けることができますので、加熱式タバコをやめたい方も遠慮なくご相談ください。

米国では電子タバコに関連する急性肺障害(EVALI)が多数報告され、死亡例も発生しています。原因物質としてビタミンEアセテートが関連していると考えられていますが、電子タバコの長期的な安全性データは十分ではありません。いずれのタバコ製品も「安全」とは言い切れず、呼吸器の健康を守るための唯一確実な選択は、すべてのタバコ・ニコチン製品を完全にやめることです。

電子タバコ(VAPE)についても触れておく必要があります。電子タバコは加熱式タバコとは異なり、タバコ葉を使用せず、液体(リキッド)を加熱してエアロゾルを発生させるデバイスです。日本ではニコチン入りリキッドの販売は規制されていますが、海外製品の個人輸入や、非正規品の流通が問題となっています。

タバコ会社は「有害物質が少ない」という点を強調して加熱式タバコを販売していますが、これは「安全」とは全く異なる概念です。紙巻きタバコの有害物質が100であるのに対し、加熱式タバコが50であったとしても、ゼロでない以上リスクは存在します。特に呼吸器疾患をお持ちの方にとっては、わずかな有害物質であっても気道への追加的なダメージとなります。すべてのタバコ製品を完全にやめることだけが、呼吸器の健康を守る確実な方法です。

電子タバコ(VAPE)についても注意が必要です。電子タバコは加熱式タバコとは異なり、タバコ葉を使用せず液体(リキッド)を加熱してエアロゾルを発生させるデバイスです。日本ではニコチン入りリキッドの販売は規制されていますが、海外製品の個人輸入が問題となっています。米国では電子タバコに関連する急性肺障害(EVALI)が多数報告され、死亡例も発生しています。

加熱式タバコから紙巻きタバコに戻る「逆スイッチ」も報告されています。加熱式タバコで喫煙欲求が十分に満たされず、結局紙巻きタバコとの併用(デュアルユース)になるケースも少なくありません。デュアルユースは従来のタバコ単独使用よりもニコチン摂取量が増加する可能性があり、健康リスクがかえって高まる懸念があります。真の意味での健康改善を目指すのであれば、加熱式タバコへの切り替えではなく、ニコチン依存症そのものからの脱却、すなわち完全な禁煙を選択することが最も確実な方法です。

加熱式タバコの煙(エアロゾル)には、ホルムアルデヒドやアクロレインなどの有害化学物質が含まれていることが複数の研究で確認されています。これらの物質は気道粘膜に直接的なダメージを与え、慢性的な気道炎症を引き起こす原因になります。加熱式タバコのメーカーは「有害成分の削減」をアピールしていますが、有害成分がゼロになるわけではなく、長期使用による健康影響についてのデータはまだ十分に蓄積されていません。

まとめ

加熱式タバコは紙巻きタバコに比べて一部の有害物質は減少しますが、「安全」とは言えません。ニコチンをはじめとする有害物質は含まれており、肺への悪影響も否定できません。日本呼吸器学会も使用を推奨していない立場です。本当の健康のためには、加熱式タバコを含むすべてのタバコ製品をやめることが最善の選択です。