COLUMN

院長コラム
2026.01.09

大人の喘息、主な原因と発症のサインについて

「喘息は子供の病気」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし実際には、大人になってから初めて喘息を発症するケースは決して少なくありません。

成人喘息は、子供の喘息とは原因や特徴が異なる部分があり、気づかないまま過ごしている方も多いと言われています。ここでは、大人の喘息の主な原因や、発症のサインについて解説します。

大人の喘息は珍しくない

日本における成人喘息の有病率は約10%前後と推定されており、決してまれな病気ではありません。近年で3.14%(1985年)から10.4% (2017年)と増加しています。(Nakamura Y, et al. Allergol Int. 2020.)特に40〜60代での発症も多く、「この年齢で喘息になるなんて」と驚かれる方も少なくありません。

子供の頃に喘息があった方が大人になって再発するケースだけでなく、これまで喘息と診断されたことがない方が成人後に初めて発症するケースも多く見られます。実は、大人の喘息患者さんの約半数は成人になってからの発症とも報告されています。

「10%」という数字を聞いてもピンとこないかもしれませんが、実はこれは他の代表的な生活習慣病と並ぶ規模です。たとえば糖尿病は成人の約10%(約10人に1人)、慢性腎臓病(CKD)は約13%(約8人に1人)、脂質異常症は約25%(約4人に1人)、高血圧に至っては約33%(約3人に1人)が該当するとされています。肥満(BMI25以上)も男性では30%を超え、20〜40代の女性でも10〜15%前後にのぼります。いずれも10%を大きく上回る、いわば「国民病」と呼ばれる疾患群です。

つまり喘息は、こうした誰もが名前を知っている病気と肩を並べるほどありふれた存在だということです。

成人喘息の主な原因

大人の喘息は、子供の喘息と比べて原因が多岐にわたるのが特徴です。大きく分けて、アレルギーが関与するタイプと、アレルギー以外の要因が関与するタイプがあります。

アレルギーが関与するタイプ

ダニ、ハウスダスト、ペットの毛、カビ、花粉などのアレルゲンが引き金となって気道に炎症が起きるタイプです。血液検査でアレルギー反応が確認できることが多く、アレルギー性鼻炎や花粉症を合併していることもよくあります。

花粉症やアレルギー性鼻炎をお持ちの方は、鼻だけでなく気道にも炎症が波及して喘息を発症することがあります。鼻から気管支までは一つの気道でつながっており(one airway概念)、鼻のアレルギーをきちんと管理することが喘息の予防にもつながります。

アレルギー以外の要因が関与するタイプ

成人喘息の特徴として、約半数はアレルギー検査で明確な反応が出ないタイプであることが報告されています(Wenzel SE, Lancet, 2006)。このタイプでは、以下のような要因が発症に関わっていると考えられています。

  • 喫煙・受動喫煙:タバコの煙は気道に直接ダメージを与え、慢性的な炎症を引き起こす
  • 風邪やインフルエンザなどの感染症:ウイルス感染をきっかけに気道が過敏になり、喘息を発症することがある
  • ストレス・過労:自律神経の乱れが気道の収縮に影響する
  • 肥満:内臓脂肪による炎症物質の増加や、横隔膜への圧迫が喘息の発症・悪化に関わる
  • 職場の環境:化学物質、粉塵、塗料のにおいなどを日常的に吸い込むことで発症する「職業性喘息」もある
  • 加齢:年齢とともに気道の機能が変化し、喘息が起きやすくなることがある
  • 女性ホルモンの変化:月経や更年期に伴うホルモン変動が喘息の発症・悪化に影響することが知られている

見逃しやすい発症のサイン

大人の喘息は、子供の喘息と比べて症状が軽く見えることがあり、「喘息だと気づかない」まま過ごしている方もいます。以下のような症状があれば、喘息の初期サインかもしれません。

夜間や早朝の咳

布団に入ってから咳が出始めたり、明け方に咳で目が覚めたりすることはありませんか。喘息の咳は、自律神経のリズムの関係で夜間〜早朝に悪化しやすい特徴があります。昼間は何ともないのに、夜だけ咳が出るという場合は要注意です。

運動時や階段昇降時の息切れ

以前は平気だった運動や階段で息切れを感じるようになった場合、加齢や運動不足だけが原因とは限りません。気道が狭くなっていることで、運動時に十分な空気を取り込めなくなっている可能性があります。

風邪の後に咳だけが残る

風邪をひくたびに咳だけが2〜3週間以上残るといったパターンがある場合は、咳喘息や気管支喘息の可能性があります。「毎回風邪が長引くな」と感じている方は、一度検査を受けてみることをおすすめします。

季節の変わり目に体調が崩れる

春先や秋口、台風のシーズンなど、気温差や気圧の変化が大きい時期に咳や息苦しさが出る場合も、気道の過敏性が高まっているサインです。

胸の圧迫感や「胸が重い」感じ

「ゼーゼー」という音がなくても、胸が重い、詰まるような感じがする場合は、気道が軽度に収縮している可能性があります。特に横になったときや、深呼吸をしたときに感じやすいことがあります。

子供の喘息との違い

  • 原因:子供の喘息はアレルギーが主因であることが多いが、大人はアレルギー以外の要因も多い
  • 自然治癒:子供の喘息は成長に伴い60〜70%が寛解するが、大人の喘息は自然に治ることが少ない
  • 管理の必要性:大人の喘息は長期にわたる継続的な治療と管理が必要になることが一般的
  • 合併症:大人は高血圧や糖尿病などの生活習慣病を合併していることも多く、総合的な管理が求められる

セルフチェック——こんな方は一度受診を

  • 3週間以上続く咳がある
  • 夜間や早朝に咳が出やすい
  • 以前より階段や坂道で息が切れやすくなった
  • 風邪をひくたびに咳が長引く
  • 花粉症やアレルギー性鼻炎がある
  • 喫煙歴がある(過去の喫煙を含む)
  • 家族に喘息の方がいる

喘息は早期に診断して治療を開始すれば、日常生活に支障なく過ごせるようコントロールできる病気です。呼吸器内科では、FeNO検査(呼気中の一酸化窒素を測定する検査)やスパイロメトリー(呼吸機能検査)を用いて、客観的に喘息の有無や程度を評価することができます。気になる症状がある方は、一度受診されることをおすすめします。

まとめ

  • 大人の喘息は珍しくなく、40〜60代での発症も多い
  • 原因はアレルギー性と非アレルギー性の両方があり、多岐にわたる
  • 夜間の咳、運動時の息切れ、風邪後の長引く咳は発症のサイン
  • 子供の喘息と違い、自然に治ることが少なく、長期管理が必要
  • 早期発見・早期治療が、生活の質を守る鍵となる