DISEASE

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肺がん

肺がんは、初期の段階では自覚症状がほとんど現れないことが多く、症状が出始めたときには、すでに進行しているケースも少なくありません。早期発見のためには、わずかな体調の変化や、風邪と見分けがつきにくい症状であっても、長引く場合は専門の医療機関で診察を受けることが重要です。

特に、以下のような症状が2週間以上にわたって続く場合、あるいは以前とは違うと感じる場合は、肺がんの可能性を考慮し、注意が必要です。

  • 呼吸器系の症状
    • 慢性の咳や痰の持続: 咳の性状が変わる、または治りにくい咳が続く。
    • 血痰(けったん): 痰に血が混じる。
    • 息切れや呼吸困難: がんによる気道の狭窄や胸水貯留によって生じる。
    • 胸の痛み: 鈍い痛みや、特定の部位に持続する痛み。
  • 局所進行・転移による症状
    • 声のかすれ(嗄声): がんが声帯を動かす神経を圧迫することで起こる可能性がある。
    • 肩や背中の痛み、凝り: がんが肺の最上部や肋骨などに広がっている場合に生じる。
    • 全身倦怠感(体のだるさ)や体重の減少。
    • 骨の痛みや、頭痛、吐き気などの転移による症状。

肺がんの症状は、がんの発生部位や進行度によって異なります。特に慢性の咳、体のだるさ、体重減少といった症状は、多くの場合、患者様自身が「疲労や加齢のせい」と判断しがちです。しかし、これらの症状が長引く、または改善が見られない場合は、安易に放置せず、当院へご相談ください。

原因

肺がんは、正常な肺の細胞の遺伝子に傷がつき、細胞が異常に増殖を始めることで発症します。遺伝子の損傷は、外部からの影響や生活習慣が主な原因となりますが、近年は喫煙習慣がない方でも発症するケースが増えており、原因は多様化しています。

肺がんの発生リスクを高める主要な要因は以下の通りです。

  • 1. 喫煙
    • 肺がんの最大の原因であり、リスクを最も高める要因です。特に太い気管支に発生しやすい扁平上皮がんの発生と強く関連しています。
    • ご自身が喫煙しなくても、他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙も肺がんのリスクを高めます。
  • 2. 環境・職業上の要因
    • アスベスト(石綿): 過去に石綿を扱っていた職業に従事されていた方は、特にリスクが高まります。
    • ラドン: 自然界に存在する放射性物質で、高濃度に曝露される環境での生活や労働はリスク要因となり得ます。
    • 粒子状物質(PM2.5など): 大気中の微粒子への長期的な曝露が肺がんのリスクを上昇させることが指摘されています。
    • 調理による煙: 非喫煙者の肺がんリスク要因の一つとして研究が進められています。
  • 3. 遺伝的要因や既往歴
    • 特定の遺伝的因子や、肺がんの家族歴も重要な情報となります。
    • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、既存の肺の疾患も肺がんのリスクを高める要因とされています。

喫煙習慣の有無にかかわらず、上記の症状が続く場合や、健康診断で異常を指摘された場合は、原因究明のためにも、是非一度診察にお越しください。

診断

肺がんの診断は、患者様からの症状や既往歴、喫煙習慣などのリスク要因を詳しくお伺いする問診から開始されます。当院では、肺がんの早期発見を目的とした初期のスクリーニング検査を迅速に行い、肺がんの可能性を評価します。

スクリーニング検査の役割と特徴

診断の第一段階として、以下の検査を組み合わせて行います。

検査名役割と特徴
胸部X線検査(XP)最も一般的で、健康診断でも実施される低被曝・安価な検査です。肺全体を映し出し、異常な影の有無を調べます。
胸部CT検査X線では骨や心臓に隠れて見えにくい「死角」の部分も詳細に撮影可能です。より小さく、早期の病変を見つけるのに適しています。
喀痰細胞診痰を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べます。特に喫煙者で、太い気管支に発生しやすいがんの検出に有効です。
腫瘍マーカー血液検査によって測定します。がんを見つけるための検診目的のほか、治療後の経過観察や効果判定にも利用されます。

【腫瘍マーカーに関するご注意】

腫瘍マーカーの値が高いからといって、必ずしもがんが存在するわけではありません。あくまでスクリーニング(可能性の判定)のひとつとして活用します。

診断から確定までの流れ

検査の結果、肺がんの疑いがある場合には、確定診断のために以下のステップで精密検査を進めていきます。

  1. 胸部X線検査での初期評価
    まずはレントゲンで肺の状態を確認します。
  2. CT検査・喀痰細胞診による詳細調査
    X線で影が見つかった場合や、咳・血痰などの症状がある場合には、より精度の高いCT検査や痰の検査を行い、病変の有無を詳しく調べます。
  3. 気管支鏡検査(生検)による確定診断
    がんの疑いが極めて高い場合は、内視鏡(気管支鏡)を用いて病変部位の組織を直接採取する「生検」を行います。これにより、がんの種類や性質を確定させます。

精密検査が必要と判断された際には、速やかに専門の医療機関(がんセンターや大学病院など)へのご紹介や連携を行い、迅速に治療へ移行できるようサポートいたします。

治療

肺がんの治療は、がんの種類(非小細胞肺がん、小細胞肺がん)、病期(ステージ)、患者様の全身状態、そしてがんの細胞が持つ特定の遺伝子変異の有無などに基づき、総合的に決定されます。最適な治療法を選択するため、手術、放射線治療、薬物療法(内科治療)などを組み合わせる「集学的治療」が標準的なアプローチです。

主要な治療法は以下の通りです。

  • 1. 外科治療(手術)
    • 主に早期(ステージIや一部のステージII)の非小細胞肺がんに対し、がん病巣を完全に切除することを目指します。
    • 一般的に肺葉を切除する手術が行われますが、患者様の呼吸機能によっては、より小さな切除(縮小手術)が選択される場合もあります。
  • 2. 放射線治療
    • 高エネルギーの放射線をがんに集中して照射し、がん細胞を破壊する治療法です。
    • 手術が困難な早期がんや、進行がんによる痛みや出血などの症状を和らげる目的(緩和的放射線治療)で用いられます。
  • 3. 薬物療法(内科治療)
    全身に作用する薬剤を用い、主に進行がんや広範囲に転移がある場合に治療の中心となります。
    • 化学療法: 標準的な抗がん剤治療です。
    • 分子標的治療薬: がん細胞特有の分子(特定の遺伝子変異など)を標的とする薬で、高い効果が期待されます。
    • 免疫チェックポイント阻害薬: 患者様自身の免疫の力を利用して、がんを攻撃させる最新の治療法です。
  • 4. 緩和ケア
    • がんの診断時から、治療のどの段階においても並行して行われる重要なケアです。痛みや息苦しさ、精神的な不安など、患者様が抱える身体的・精神的な苦痛を和らげ、生活の質(QOL)の維持・向上を目指します。