SASのもう一つの選択肢、マウスピース(口腔内装置)治療とは?
CPAP以外の治療選択肢があります
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療といえばCPAP(持続陽圧呼吸療法)が広く知られていますが、すべての患者さんにCPAPが最適というわけではありません。マスクの装着感が合わない方や、軽症〜中等症の方には、マウスピース(口腔内装置:OA)による治療も有効な選択肢として認められています。
口腔内装置(OA)の仕組み
口腔内装置は、就寝時に装着する歯科用のマウスピースです。下顎を通常の位置よりも数ミリ前方に固定することで、舌根部や軟口蓋が気道に落ち込むのを防ぎ、気道の開存性を確保します。この仕組みにより、いびきや無呼吸の発生を軽減することができます。
装置は上下の歯にフィットするよう歯科医師がオーダーメイドで作成し、下顎の前方移動量を患者さんの状態に合わせて細かく調整します。市販の既製品とは異なり、精密な適合と調整が可能なため、治療効果と装着感の両立が期待できます。
適応と治療効果
口腔内装置は、主にAHI(無呼吸低呼吸指数)が5〜30の軽症から中等症のSAS患者さんに適応されます。Sutherland Kらの研究(J Clin Sleep Med, 2014)によれば、適切に作成・調整された口腔内装置により、60〜70%の患者さんで無呼吸の有意な改善が得られたと報告されています。
重症のSASにはCPAPが第一選択ですが、CPAPを使用できない場合や旅行時の代替手段として口腔内装置が活用されることもあります。また、軽症の方では口腔内装置だけで十分な治療効果が得られるケースも少なくありません。
歯科での作成ステップ
口腔内装置は、医科での診断を経たうえで専門の歯科医院にて作成します。一般的な流れは以下の5ステップです。
- 医科(内科・耳鼻科等)でSASの診断を受け、口腔内装置治療の紹介状をもらう
- 歯科にて口腔内の診察・歯の状態の確認を行い、治療適応かどうかを判断する
- 上下の歯型を採取し、噛み合わせの記録をとる
- 完成した装置を装着し、フィッティングと下顎前方移動量の初期調整を行う
- 定期的に通院し、治療効果の確認と装置の微調整を行う
メリットとデメリット
口腔内装置にはCPAPと比較していくつかのメリットとデメリットがあります。治療を検討する際は両方を理解しておくことが大切です。
メリット
- 小型で携帯性に優れ、旅行や出張先にも持ち運びやすい
- 電源が不要なため、場所を選ばず使用できる
- CPAPのようなマスクの圧迫感がなく、装着への抵抗が少ない
- 健康保険が適用され、費用負担が比較的少ない
デメリット
- 重症のSASには効果が不十分な場合がある
- 顎関節への負担や歯の痛みが生じることがある
- 歯の本数が少ない方や歯周病が重い方には適応しにくい
- 長期使用で噛み合わせに変化が生じる可能性がある
また、マウスピースは歯や顎の状態に影響を与えることがあるため、6か月〜1年ごとの歯科受診で噛み合わせや顎関節の状態を確認してもらうことが推奨されます。長期的に使用するものだからこそ、定期的なメンテナンスと効果の再評価を怠らないようにしましょう。呼吸器内科と歯科の連携のもとで治療を進めることが、最良の結果につながります。
マウスピース治療を開始した後は、効果の評価が重要です。一般的には装着に慣れた1〜3か月後に簡易検査またはPSG検査を再度実施し、AHIがどの程度改善したかを確認します。十分な効果が得られていない場合は、マウスピースの下顎前方移動量の調整や、別の治療法への変更が検討されます。
また、マウスピースは歯や顎の状態に経年的な影響を与えることがあるため、6か月〜1年ごとに歯科で噛み合わせや顎関節の状態を確認してもらうことが推奨されます。装置自体も使用に伴い変形や劣化が生じるため、定期的な点検と必要に応じた作り直しが求められます。呼吸器内科と歯科の連携のもとで治療を継続することが、長期的な治療効果の維持につながります。
マウスピース治療を開始した後は、効果の評価が不可欠です。装着に慣れた1〜3か月後に簡易検査またはPSG検査を再度実施し、AHIの改善度を確認します。十分な効果が得られていない場合は、下顎前方移動量の微調整や、別の治療法の検討が必要です。
マウスピース治療の効果判定には、治療開始後に再度睡眠検査を行い、AHI(無呼吸低呼吸指数)の改善度を確認します。いびきの軽減や日中の眠気の改善は自覚的な指標として重要ですが、客観的な検査データと合わせて評価することで、治療が十分な効果を発揮しているかを正確に判断できます。
マウスピースの装着当初は違和感を覚える方が多いですが、1〜2週間で慣れるケースがほとんどです。唾液が増える、朝起きたときに顎がだるいなどの症状は初期に起こりやすい副作用ですが、多くは時間とともに軽減します。装着感に問題がある場合は歯科医に相談して調整を行うことができます。また、マウスピースは定期的な清掃とメンテナンスが必要であり、半年〜1年ごとの歯科でのチェックが推奨されています。適切に管理すれば数年間使用できますが、歯の治療で歯並びが変わった場合は作り直しが必要になることもあります。
マウスピース治療の成功には、歯科との連携が不可欠です。マウスピースを作製するためには、まず歯や歯周組織の状態を歯科医が確認します。重度の歯周病や歯の欠損が多い場合は、マウスピースの装着が困難なことがあります。そのため、普段からの歯科検診と口腔ケアが、マウスピース治療の選択肢を広げることにもつながります。
まとめ
口腔内装置は、軽症〜中等症のSAS患者さんにとって有効で手軽な治療選択肢です。CPAPに抵抗がある方や携帯性を重視する方にも適しています。医科と歯科が連携して治療にあたりますので、SASと診断された方やCPAPの継続が難しい方は、口腔内装置について担当医にご相談ください。