DISEASE

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気胸

症状

気胸は、肺の表面に穴があき、そこから漏れ出た空気が胸腔(肺と胸壁の間)に溜まり、肺を外側から圧迫してしぼませてしまう状態です。この「肺虚脱」と呼ばれる状態は、突然発症することが多く、患者様の呼吸機能に直接影響を与えます。症状の程度は、胸腔内に溜まった空気の量(肺虚脱の重症度)と強く相関しており、空気の漏れが多ければ多いほど、症状は強く現れます。

気胸が発症した際にみられる代表的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 突然の胸痛または背部痛: 多くの場合、急に、鋭い胸の痛みが起こります。この痛みは、時に背中や肩にまで広がる(放散する)ことがあります。
  • 呼吸困難(息切れ・息苦しさ): 肺がしぼむことで、一度に十分な酸素を取り込むことができなくなり、息苦しさや息切れを感じます。特に労作時だけでなく、安静時にも息苦しさを感じることがあります。
  • 咳: 肺を包む胸膜が刺激されることによって、乾いた咳が誘発されることがあります。
  • 皮下気腫: 漏れた空気が皮膚の下にまで達することで、その部分の皮膚を触ると「プクプクとした」特有の感覚を覚えることがあります。

これらの症状は、軽度であれば違和感程度で済むこともありますが、重症化すると激しい呼吸困難や冷や汗、動悸などを引き起こし、緊急性の高い状態(緊張性気胸など)に移行する可能性もあります。呼吸器の病気は、早期の診断と適切な管理が重要となりますので、突然の胸の痛みや息切れを感じた場合は、速やかに医療機関にご相談ください。

原因

気胸が発生する原因はさまざまですが、最も一般的なものは、肺の表面にできた脆弱な袋状の構造物(肺嚢胞、ブラやブレブと呼ばれます)が破裂することです。

気胸は、その発生機序によって異なり、当院のような内科で主に対応するのは、自然気胸や続発性気胸です。まれに外傷性気胸や月経随伴性気胸も見られます。

気胸の分類

気胸は原因や背景によって、主に以下の5つに分類されます。

① 特発性気胸(原発性自然気胸)

いわゆる「自然気胸」として最もよく知られているものです。特定の基礎疾患がない健康な人に発症します。

  • 発生のメカニズム: 肺の表面にできる薄い風船のような袋(ブラ、あるいはブレブ)が、何らかのきっかけで破裂することにより生じます。これらのブラは、特に肺の先端部(肺尖部)にできやすい傾向があります。
  • 好発年齢・特徴: 好発年齢は二相性で、10代後半〜30代60歳代にみられますが、多くは若年層での発症です。 特に「長身」「痩せ型」「胸郭の前後径が小さい」男性に多く見られるのが特徴です(喫煙習慣の有無にかかわらず発症します)。

② 続発性気胸(続発性自然気胸)

肺に元々何らかの病気がある方に発症する気胸です。

  • 発生のメカニズム: 慢性閉塞性肺疾患(COPD:肺気腫など)や間質性肺炎、肺結核の既往など、既存の肺疾患によって肺の組織がすでに傷ついている状態で発症します。基礎疾患により肺の弾力性や予備力が低下しているため、肺のダメージ部分が破れやすい状態にあります。
  • 好発年齢・特徴: 肺疾患を持つ高齢者や、長年の喫煙習慣がある方に多く見られます。原発性(特発性)に比べて肺の予備機能が低いため、重症化しやすく、より慎重な管理が必要です。

③外傷性気胸

けがや肋骨骨折などが原因で、肺に穴が開き、気胸となる状態

④医原性気胸

麻酔、人工呼吸や医療行為(穿刺や中心静脈カテーテルなど)が原因で気胸となる状態

⑤月経随伴性気胸

肺に本来はない”異所性の子宮内膜”が存在し、月経(生理)に伴い、子宮内膜の細胞が死滅し、肺に穴が開いてしまう状態。

多くの場合、気胸の発症は「ブラの破裂」という局所的な問題から引き起こされます。特に、咳やくしゃみ、急激な体位変換、気圧の変化などがブラを破裂させる引き金になることがありますが、時には特別な誘因なく突然発症することもあります。

診断

気胸の診断は、患者様からお伺いする症状や身体診察に加え、迅速な画像検査(胸部レントゲン検査)によって確定されます。特に突然の胸痛と呼吸困難は、心臓疾患や他の重篤な肺疾患と共通する症状であるため、正確かつ迅速な診断が極めて重要になります。

当院では、主に以下の方法を組み合わせて診断を行います。

  • 問診と身体診察:
    • 問診: いつ、どのような動作で症状が出たか、胸痛の性質や呼吸困難の程度、過去の病歴(喫煙歴、既存の肺疾患など)を詳しくお伺いします。
    • 身体診察: 聴診器を用いて肺の音を確認します。気胸がある場合、空気が漏れてしぼんだ側の胸の音(呼吸音)が小さくなる、あるいは聞こえにくくなるという特徴的な所見が得られます。
  • 画像検査(胸部レントゲン検査):
    • 確定診断: 胸部レントゲン検査は、気胸の診断において最も基本的で決定的な検査です。
    • 所見の確認: レントゲン画像上、漏れて胸腔に溜まった空気は黒く写り、内側にしぼんだ肺の境界線が確認されます。また、通常は肺全体に確認できるはずの血管の模様(肺紋理)が、空気の溜まった領域では見えなくなる(肺紋理の消失)ことが、気胸の重要なサインとなります。
    • 重症度の判定: レントゲン画像により、肺の虚脱の程度を軽度・中等度・重度に分類し、その後の治療方針を決定します。

重症度

軽症  肺尖部が鎖骨より頭側に認められる程度の肺の拡張がある

中等症 軽症と重症の間

重症 肺の拡張≦1/2程度

左気胸(軽症)⇩

左気胸(中等症)⇩

右気胸(重症)⇩

右緊張性気胸⇩

画像検査によって、虚脱の程度が高度に進み、胸の真ん中の臓器(縦隔)が圧力で反対側に押しやられる「縦隔の偏位」が確認された場合、これは生命を脅かす緊張性気胸の兆候であり、直ちに緊急的な処置が必要と判断されます。

治療

気胸の治療は、肺の虚脱の程度、症状の強さ、空気漏れの持続時間、そして患者様の背景(年齢や基礎疾患の有無)を総合的に考慮して選択されます。当院のような内科クリニックでは、主に軽症から中等症に対する治療が中心となり、安全で適切な管理を行います。

①経過観察

軽症の気胸は慎重に経過観察(保存的加療)となります

②胸腔ドレナージ(穿刺吸引/持続吸引)

中等症以上は侵襲的な加療が必要となり、持続吸引が必要な場合は入院加療となります。
胸腔ドレナージを行っても改善がない場合は胸膜癒着療法(薬剤を胸腔内に投与し、肺と胸壁を癒着させる)や手術が必要となります。

③手術

一般的な手術適応は

  • 再発気胸
  • 胸腔ドレナージを行っても難治症例
  • 両側気胸 など

当院でできる気胸の治療法は、主に以下の二つの柱で構成されます。

気胸の治療法は、主に以下の二つの柱で構成されます。

  • 軽症例への対応(安静と経過観察):
    • 治療内容: 肺の虚脱が軽度であり、呼吸困難などの症状が強くない場合は、まずは安静を保ち、空気が自然に吸収されるのを待ちます。
    • 管理: 外来で定期的に胸部レントゲン検査を行いながら、慎重に経過観察を進めます。必要に応じて酸素投与を行うことで、体内に溜まった空気の吸収を促進する効果が期待できます。
  • 中等症以上の対応(胸腔内の脱気とドレナージ):
    • 一時的な脱気: 虚脱が中等度で、症状が安定している場合は、注射器を用いて胸腔内の空気を一時的に吸引・除去する処置を行うことがあります。
    • 胸腔ドレナージの検討: 虚脱が顕著な場合や、空気漏れが持続している場合は、胸腔内に細いチューブ(ドレーン)を留置し、持続的に空気を排出(脱気)して肺の再膨張を促す胸腔ドレナージが必要となります。このドレナージは入院治療が原則となります。そのため、当院で状態を評価した上で、入院施設を持つ専門の医療機関をご紹介し、迅速な治療へ移行できるよう連携をとります。

内科的治療は、漏れた空気を抜いて、肺を膨らませるための処置ですが、肺の穴そのものを根本的に塞ぐものではないため、再発のリスクが残ります。ドレナージを行っても空気漏れが長期間(数日以上)持続する場合や、再発を繰り返す場合など、内科的治療での治癒が難しいと判断される場合は、ブラの切除などを行う専門施設での外科的治療(手術)を検討し、迅速に連携をとることが重要です。