DISEASE
病名から探す痛風・高尿酸血症
尿酸値が高いと何故いけないのか?
高尿酸血症はメタボリック症候群や慢性腎臓病と関連し、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクがあります
この言葉が示す通り、尿酸値が高い状態は単なる「足の痛みの予備軍」ではありません。画像でも示されているように、高尿酸血症は内臓脂肪型肥満、高血圧、糖尿病といったメタボリック症候群と合わさることで、血管の老化(動脈硬化)を音もなく加速させてしまいます。
一度進行し、ボロボロになってしまった血管を元通りに修復することは極めて困難です。だからこそ、深刻な「血管事故」が起きる前の今、適切なコントロールを行う必要があります。
高尿酸血症の治療の目的は、痛みを抑えることだけではなく、「動脈硬化の進行を食い止め、数年後・数十年後の命を守ること」にあります。将来の健康な生活を維持するために、自覚症状がない今のうちから、医師の指導のもとで尿酸値を正しく管理していく必要があります。

症状
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が 7.0 mg/dL を超えた状態を指します。この数値を超えると、血液に溶けきらなくなった尿酸が結晶化し、関節や臓器の周りに少しずつ溜まり始めます。高尿酸血症そのものには自覚症状がほとんどありませんが、これを放置して尿酸の結晶が溜まり続けると、ある日突然「痛風発作」と呼ばれる非常に激しい関節炎を引き起こします。
痛風発作は「風が吹くだけでも痛い」と言われるほど強烈な痛みが特徴です。発作の多くは足の親指の付け根から始まりますが、症状が進行すると足首、膝、手の関節など全身に広がることもあります。具体的な症状には以下のようなものがあります。
- 突然の激痛: 何の前触れもなく、あるいは関節の違和感の後に、歩くことが困難になるほどの激痛に襲われます。痛みは発症から24時間以内にピークに達することが一般的です。
- 患部の赤み、腫れ、熱: 炎症が起きた関節は真っ赤に腫れ上がり、触れると熱を持っています。
- 夜間から明け方の痛み: 体内の水分バランスの変化などにより、夜寝ている間や明け方に発作が起こりやすい傾向があります。
- 発作の予兆: 発作が起こる数時間前から前日にかけて、関節がムズムズする、つっぱる、ピリピリするといった独特の違和感を感じる方もいらっしゃいます。
- 慢性化と結節: 適切な治療をせずに放置すると、発作を繰り返すようになり、関節の周りに尿酸の塊である「痛風結節」と呼ばれるコブができることがあります。
痛風発作の痛みは通常、1週間から10日ほどで自然に治まりますが、これは治ったわけではありません。体内に尿酸の結晶が残っている限り再発の危険があり、放置すると腎機能の低下や尿路結石、動脈硬化といった全身の健康を脅かす合併症につながる恐れがあるため、早期の対応が必要です。
原因
尿酸値が上昇する根本的な原因は、体内で作られる尿酸の量が増えすぎるか、あるいは尿などと一緒に体の外へ出す力が弱まることで、体内の尿酸バランスが崩れることにあります。尿酸は「プリン体」という物質が分解されたときに出る老廃物であり、通常は毎日作られた分と同じくらいの量が排出されています。
高尿酸血症は、尿酸の増え方によって大きく3つのタイプに分けられます。
- 尿酸排泄低下型: 腎臓から尿酸を出す力が弱くなっているタイプで、日本人の約6割がこのタイプに当てはまると言われています。
- 尿酸産生過剰型: 体内で尿酸を多く作りすぎてしまうタイプです。
- 混合型: 上記の2つの原因が組み合わさっているタイプです。
日常生活において尿酸値を上げる具体的な要因には、以下のようなものがあります。
- 食生活の偏り: レバー、白子、一部の魚介類や干物など、プリン体を多く含む食品の摂りすぎは直接的な原因となります。また、甘いジュースなどに含まれる果糖も尿酸値を上げることが分かっています。
- アルコールの過剰摂取: アルコールそのものが尿酸を作るのを助け、出すのを邪魔してしまいます。特にビールはプリン体も多く含まれるため注意が必要です。
- 肥満: 内臓脂肪の蓄積は尿酸の代謝を悪化させ、尿酸値を上げやすくします。
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS): 当院のような呼吸器内科で特に注目している原因です。睡眠中に呼吸が止まって酸素が不足すると、細胞のエネルギーが過剰に分解され、尿酸が急激に作られてしまいます。いびきをかく習慣がある方はリスクが高いと言えます。
多くの場合、これらの生活習慣や体質的な要因が複雑に絡み合って発症します。特に睡眠時無呼吸症候群を伴う場合は、単なる食事制限だけでは数値が改善しにくいこともあるため、総合的な視点から原因を突き止めることが大切です。
診断
診断では、まず「いつから痛むか」「どのような痛みか」といった症状を詳しくお伺いし、同時に関節の腫れや赤みを直接確認します。高尿酸血症かどうかを確定させるためには血液検査が不可欠であり、血清尿酸値が 7.0 mg/dL 以上であれば診断が確定します。
具体的な診断方法は、以下のものを組み合わせて行います。
- 血液検査: 尿酸値の測定に加え、腎臓の働き(クレアチニン)や血糖値、コレステロール値なども調べ、全身の健康状態を評価します。
- 超音波検査(エコー検査): 関節内の様子をリアルタイムで確認できる検査です。尿酸の結晶が軟骨の表面に白く薄い層のように見える「ダブルコントゥアサイン」という特有のサインを見つけることで、痛風であるという確実な根拠を得ることができます。
- 尿検査: 尿の酸性度を測ります。尿が酸性に傾きすぎていると尿路結石ができやすくなるため、治療方針を決める際の重要な指標になります。
- 呼吸器の評価: 夜間のいびきがひどい、日中の眠気が強いといった症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群が尿酸値を上げている可能性を考え、簡易的な検査を検討します。
痛風発作の真っ最中は、炎症の影響で血液中の尿酸値が一時的に下がってしまい、正常な数値として出てしまうことがあります。そのため数値だけにとらわれず、エコー検査による関節の観察や、これまでの経過を総合して判断することが正確な診断につながります。
治療
治療の最終的なゴールは、血液中の尿酸値を 6.0 mg/dL 以下に保つことで、体内に溜まった尿酸の結晶を溶かし、痛風発作の再発や腎障害、尿路結石などの恐ろしい合併症を防ぐことにあります。治療は大きく分けて「今ある痛みを抑える治療」と「尿酸値を下げるための治療」の2段階で行います。

具体的な治療内容は以下の通りです。
- 痛みを抑える薬物療法: 発作が起きているときは、まず炎症と痛みを取ることを最優先します。痛み止めの飲み薬を短期間使用します。また、発作の予兆を感じた段階でコルヒチンという薬を飲むことで、激痛を未然に防ぐ方法もあります。
- 尿酸値を下げる薬物療法: 発作が落ち着いてから、尿酸値を下げる薬を少量から使い始めます。急激に数値を下げるとかえって発作を誘発することがあるため、数ヶ月かけてゆっくりと目標値まで下げていきます。
- 食事と生活習慣の改善: 治療の土台となる部分です。プリン体を多く含む食品を控えるほか、1日2リットルを目安にしっかり水分(水やお茶)を摂り、尿と一緒に尿酸を出しやすくします。
- 低脂肪乳製品や野菜の摂取: 低脂肪の牛乳やヨーグルト、野菜や海藻などは尿酸の排出を助ける効果が期待できるため、積極的に摂り入れることが勧められます。
- 呼吸器疾患の並行治療: 睡眠時無呼吸症候群がある場合は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)などで睡眠中の酸素不足を解消します。これにより尿酸の産生が抑えられ、お薬の量を減らせることもあります。
痛風は「痛いときだけ薬を飲む」という対処では根本的に解決しません。痛みが引いた後も、関節に溜まった尿酸の結晶がすべて溶けてなくなるまでには時間がかかります。自己判断で通院を中断せず、健康な体を守るために医師と相談しながら治療を継続していくことが大切です。