息切れの原因は肺?心臓?見分けるポイントと受診の目安
息切れは多くの疾患のサイン
階段を上っただけで息が切れる、少し歩いただけで苦しくなる。こうした息切れは年齢のせいだと思われがちですが、実は肺や心臓の疾患が隠れているサインかもしれません。息切れ(医学的には「呼吸困難」)は、呼吸器疾患と循環器疾患の両方に共通する症状であるため、その原因を特定することが適切な治療への第一歩となります。息切れの原因は大きく「肺」に起因するものと「心臓」に起因するものに分けられますが、両者が合併していることも珍しくありません。以前は問題なくできていた運動や日常動作で息切れを感じるようになった場合には、早めの受診が勧められます。
肺が原因の息切れ
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDは主に長年の喫煙によって引き起こされる肺の病気で、気管支の慢性的な炎症と肺胞の破壊(肺気腫)によって空気の通り道が狭くなり、息を吐き出しにくくなることが特徴です。初期には労作時(坂道や階段を上るとき)の息切れとして現れ、進行すると平地歩行や安静時にも呼吸困難を感じるようになります。喫煙歴のある40歳以上の方で慢性的な咳や痰がある場合には、肺機能検査(スパイロメトリー)を受けることが推奨されます。
気管支喘息
喘息は気道の慢性的なアレルギー性炎症により気道が過敏になり、発作的に気道が狭窄する疾患です。ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)を伴う呼吸困難が特徴的で、夜間や早朝、運動後、アレルゲンへの暴露時に症状が悪化する傾向があります。成人発症の喘息も少なくなく、風邪をきっかけに発症することもあります。
間質性肺炎
間質性肺炎は肺の間質(肺胞の壁やその周囲の組織)に炎症や線維化が起こる疾患の総称です。肺が硬くなるため酸素の取り込みが困難になり、労作時の息切れと乾いた咳が主な症状です。進行性の経過をたどるものも多く、早期発見と適切な管理が重要です。胸部CTで特徴的な画像所見が認められます。
肺塞栓症
肺塞栓症は、下肢などの深部静脈にできた血栓が肺動脈に詰まる疾患で、突然の息切れ、胸痛、頻脈が特徴です。長時間の同一姿勢(飛行機のエコノミークラス症候群)や手術後、下肢のギプス固定後などに発症リスクが高まります。重症の場合はショックや心停止に至ることもあるため、突然発症の強い息切れは緊急性の高い症状として認識する必要があります。
心臓が原因の息切れ
心不全
心不全は心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態です。肺にうっ血(血液の滞り)が生じることで呼吸困難が出現します。労作時の息切れから始まり、進行すると就寝後に苦しくなる「発作性夜間呼吸困難」や、横になると苦しいため上体を起こして眠る「起座呼吸」が特徴的です。足のむくみ、体重増加、疲労感を伴うことが多いです。高血圧、虚血性心疾患、弁膜症などが原因となります。
不整脈
心房細動などの不整脈では、心臓の拍動が不規則になることで心臓のポンプ効率が低下し、息切れや動悸を引き起こすことがあります。発作性の場合は突然の息切れと動悸で始まり、自然に治まることもありますが、持続する場合は心不全を併発するリスクがあります。
弁膜症
心臓の弁(僧帽弁や大動脈弁など)が正常に機能しなくなる疾患で、弁の狭窄や閉鎖不全により心臓の負担が増大します。進行するにつれて息切れ、倦怠感、足のむくみなどの心不全症状が出現します。聴診で心雑音が発見されることがきっかけで診断されるケースも少なくありません。
肺と心臓を見分けるポイント
肺由来の息切れと心臓由来の息切れを完全に見分けることは専門医でも難しいことがありますが、いくつかの手がかりがあります。肺疾患による息切れでは、喘鳴や咳を伴うことが多く、痰の増加が見られることもあります。一方、心疾患による息切れでは、足のむくみや体重増加、夜間の呼吸困難、横になると悪化するといった特徴があります。また、心疾患では動悸や胸部の圧迫感を伴うことが多いのに対し、肺疾患では指先や唇のチアノーゼ(青紫色の変色)が見られることがあります。ただし、COPDと心不全は合併しやすいため、両方の原因が重なっている場合もあることを知っておくことが重要です。
(参考文献:日本呼吸器学会. 呼吸器診療ガイドライン; 日本循環器学会. 急性・慢性心不全診療ガイドライン 2017年改訂版)
受診の目安と検査
以下のような場合には、早めの医療機関受診をおすすめします。以前は普通にできていた運動や家事で息切れを感じるようになった場合、安静時にも息苦しさがある場合、横になると呼吸が苦しくなる場合、足のむくみや急な体重増加を伴う場合、突然強い息切れが出現した場合(この場合は救急対応が必要です)などです。受診時には、胸部レントゲン、心電図、血液検査(BNP・NT-proBNP)、肺機能検査、心臓超音波検査(心エコー)、胸部CTなどの検査が行われ、原因の特定が図られます。
まとめ
息切れは肺と心臓のどちらが原因であっても、放置すべきではない症状です。随伴症状(咳、痰、むくみ、動悸など)を手がかりにしつつ、正確な原因特定のためには医療機関での検査が不可欠です。特に急な発症や安静時の息切れは緊急性が高い可能性がありますので、速やかに受診することが重要です。