COLUMN

コラム

呼気NO検査の数値、どう見る?高い場合、低い場合の意味

FeNO(呼気中一酸化窒素)とは

FeNO(Fractional Exhaled Nitric Oxide:呼気中一酸化窒素濃度)とは、吐く息の中に含まれる一酸化窒素(NO)の量を測定した数値のことです。一酸化窒素は体内でさまざまな役割を果たしていますが、気道においては好酸球性の炎症が存在するときに産生量が増加することが知られています。そのため、FeNOは気道の好酸球性炎症の指標として、喘息の診断や管理に広く活用されています。

FeNO検査は非侵襲的(体に負担がない)で、痛みもなく短時間で実施できるため、外来診療で手軽に行える検査として普及が進んでいます。特に、咳が長引いている方や喘息の疑いがある方の診断に有用です。

検査の仕組みと方法

FeNO検査は、専用の測定装置に接続されたマウスピースをくわえ、一定の速度でゆっくりと息を吐くだけの簡単な検査です。測定時間は数十秒程度で、息を吐く流量を50mL/秒に一定に保つことが正確な測定のために重要です。多くの装置では、画面上にガイドが表示され、適切な流量を維持できるようにサポートしてくれます。検査は座位で行い、検査前2時間以内の飲食や激しい運動は結果に影響する可能性があるため避けることが推奨されます。

測定結果はppb(parts per billion:10億分の1)という単位で表されます。測定は通常2〜3回行い、再現性のある値を記録します。検査全体で5分程度と短時間で完了します。

数値の基準と解釈

FeNOの数値の解釈については、日本とアメリカで基準が少し異なります。これは体格などの人種差によるものと考えられており、日本では『喘息診療実践ガイドライン2024』に基づいた基準が用いられています。なお、日本人健常者のFeNOの平均値は15 ppbで、正常上限は37 ppbとされています。

22 ppb未満:低値〜正常

FeNOが22 ppb未満の場合、好酸球性の気道炎症は存在しないか、あっても軽微であると考えられます。喘息の診断においては、好酸球性炎症の関与が少ないことを示唆します。ただし、FeNOが低いからといって喘息を完全に否定できるわけではなく、好酸球性でないタイプの喘息(好中球性喘息など)や、吸入ステロイドで十分にコントロールされている喘息では低値を示すことがあります。なお、症状がなく、かつFeNOが15 ppb以下であれば、好酸球性炎症が抑制されている可能性が高いと考えられます。

22〜37 ppb:中間値

FeNOが22〜37 ppbの場合は、吸入ステロイド未使用の方では喘息の可能性が高いと判断されます。ただし、ほかの臨床所見と合わせて総合的に判断する必要があり、症状や呼吸機能検査の結果、アレルギー検査の結果などを組み合わせて評価します。アレルギー性鼻炎を合併している場合にも、この程度の上昇が見られることがあります。また、すでに治療中の方でFeNOが35 ppb以上を示す場合は、喘息のコントロールが不良である可能性が考えられます。

37 ppb以上:高値

FeNOが37 ppb以上の場合は、好酸球性の気道炎症が顕著に存在していることを強く示唆し、吸入ステロイド未使用の方ではほぼ確実に喘息と診断できると考えられます。すでに治療中の方でFeNOが高値を示す場合は、治療の不十分さ(吸入手技の問題、服薬アドヒアランスの低下など)やアレルゲンへの持続的な曝露が考えられます。

なお、アメリカ胸部学会(ATS)のガイドライン(Dweik RA, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2011)では、25 ppb未満を低値、25〜50 ppbを中間値、50 ppb以上を高値としていますが、これは欧米人を対象とした基準です。日本人では体格などの人種差を考慮した上記の基準を用いることが推奨されています。

FeNOが高い場合の意味

FeNO高値が示す主な状態としては、好酸球性喘息、アレルギー性の気道炎症、咳喘息(典型的な喘鳴を伴わないタイプの喘息)、好酸球性気管支炎などが挙げられます。アトピー素因(アレルギー体質)をお持ちの方は、喘息がなくてもやや高めの値を示す傾向があります。また、ウイルス性の上気道炎の後にも一過性にFeNOが上昇することがあります。

FeNOが低い場合の意味

FeNOが低い場合は、好酸球性の気道炎症が乏しいことを意味します。咳や息苦しさがあるにもかかわらずFeNOが低い場合は、非好酸球性喘息、咳嗽の他の原因(胃食道逆流症、後鼻漏、感染後咳嗽など)を考慮する必要があります。喫煙者ではFeNOが低値を示す傾向があり、これは喫煙による一酸化窒素合成酵素の抑制が一因とされています。吸入ステロイドの使用中も好酸球性炎症が抑制されるためFeNOは低下します。

治療モニタリングへの活用

FeNO検査は、喘息の治療効果を客観的に評価するツールとしても重要です。吸入ステロイドによる治療を開始した後にFeNO値が低下すれば、好酸球性炎症が適切にコントロールされていることを示します。逆に、治療中にもかかわらずFeNOが高値のままであれば、吸入手技の見直し、服薬アドヒアランスの確認、アレルゲン回避の徹底などが必要となります。定期的にFeNOを測定することで、治療の強度を過不足なく調整する手助けとなります。

まとめ

FeNO検査は、息を吐くだけで気道の好酸球性炎症を客観的に評価できる簡便な検査です。数値の高低によって喘息の診断や治療方針の決定に役立てることができます。ただし、FeNOの値だけで病気の診断が確定するわけではなく、症状、呼吸機能検査、アレルギー検査などと組み合わせた総合的な判断が重要です。咳が長引いている方や喘息が気になる方は、FeNO検査について医師にご相談ください。