COLUMN

コラム

呼吸機能検査(スパイロメトリー)でわかる「肺年齢」とは?

肺にも「年齢」がある

心臓や血管に年齢があるように、肺にも「肺年齢」という考え方があります。肺年齢とは、呼吸機能検査(スパイロメトリー)の結果をもとに算出される指標で、自分の肺の機能が何歳相当であるかを表します。実年齢が50歳でも肺年齢が70歳というケースは珍しくなく、特に長年の喫煙歴がある方では実年齢と肺年齢に大きな差が生じることがあります。肺年齢を知ることは、自分の肺の健康状態を客観的に把握し、生活習慣の見直しにつなげる良いきっかけとなります。

スパイロメトリーとは

スパイロメトリーは、肺に出入りする空気の量と速さを測定する呼吸機能検査です。最も基本的かつ重要な呼吸機能検査であり、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)をはじめとする呼吸器疾患の診断・管理に幅広く用いられています。検査ではマウスピースをくわえて、指示に従って大きく息を吸ったり、思い切り速く息を吐いたりする動作を行います。

スパイロメトリーで測定される主要な指標は以下の通りです。

  • 努力肺活量(FVC:Forced Vital Capacity):最大限に息を吸い込んだ状態から、思い切り速く最後まで息を吐き切ったときの総空気量です。肺の容量を反映し、間質性肺炎などの拘束性障害では低下します。
  • 1秒量(FEV1:Forced Expiratory Volume in 1 second):最大努力で息を吐き出したときの最初の1秒間に吐き出せる空気の量です。気道の通りやすさを反映する重要な指標で、喘息やCOPDでは低下します。
  • 1秒率(FEV1/FVC):FVCに対するFEV1の比率で、パーセントで表されます。正常では70%以上とされ、これが70%を下回る場合は閉塞性換気障害(空気の通り道が狭くなっている状態)が疑われます。COPDの診断基準としても重要な指標です(GOLD 2023)。

検査の流れ

スパイロメトリーは外来で短時間に実施できる検査です。検査の流れは以下の通りです。まず、鼻からの空気の漏れを防ぐためにノーズクリップを装着します。次に、マウスピースをしっかりとくわえ、技師の指示に従って検査を行います。

基本的な手順としては、安静に数回呼吸した後、大きくゆっくりと最大限に息を吸い込み、一気に勢いよく最後まで息を吐き出します。この操作を通常3回以上繰り返し、再現性のある良好なデータを得ます。検査時間はトータルで15〜20分程度です。最大限の努力で息を吐き出す必要があるため、検査技師の声かけに合わせて全力で息を吐くことが正確な結果を得るために大切です。

検査前の注意事項として、直前の喫煙(少なくとも1時間前から禁煙)、激しい運動(30分前から避ける)、きつい服装の着用は控えることが推奨されます。気管支拡張薬を使用中の方は、検査前の使用について事前に医師に確認してください。

肺年齢の算出方法

肺年齢は、スパイロメトリーで測定された1秒量(FEV1)の値をもとに、日本呼吸器学会が提唱する予測式を用いて算出されます。具体的には、性別・身長に基づく標準的なFEV1の予測値と実測値を比較し、実測のFEV1がどの年齢の標準値に相当するかを逆算することで肺年齢が求められます。

たとえば、実年齢55歳の方のFEV1が同性・同身長の65歳の標準値に相当する場合、肺年齢は65歳と判定されます。肺年齢は実年齢と比較して高いほど肺機能の低下が進んでいることを意味し、呼吸器疾患のリスクが高い状態にあることを示唆します。

肺年齢が実年齢より高い場合

肺年齢が実年齢を大きく上回っている場合、その最大の原因は喫煙です。タバコの煙に含まれる有害物質は気道の慢性炎症を引き起こし、気管支の壁を厚くし、肺胞を破壊します。この変化は徐々に進行し、喫煙を続ける限り肺年齢は加速度的に高くなります。COPDの患者さんでは、実年齢より20歳以上も肺年齢が高いケースも見られます。

喫煙以外にも、大気汚染への長期曝露、職業的な粉塵やガスへの曝露、過去の重症肺炎の後遺症なども肺年齢を押し上げる因子となります。ただし、禁煙を実行することで肺機能の低下速度は非喫煙者と同程度まで改善することが知られており、何歳で禁煙しても遅すぎるということはありません。肺年齢が高いと指摘された場合は、まず禁煙に取り組むことが最も効果的な対策です。

喘息・COPD診断への応用

スパイロメトリーは喘息やCOPDの診断に不可欠な検査です。1秒率(FEV1/FVC)が70%未満であれば閉塞性換気障害と判定され、COPDの診断基準のひとつとなります。さらに、気管支拡張薬の吸入後にFEV1が12%以上かつ200mL以上改善する場合は「可逆性あり」と判定され、喘息を示唆する所見となります。

COPDの重症度分類にもスパイロメトリーの結果が用いられます。FEV1の予測値に対する実測値の割合(%FEV1)により、軽症(80%以上)から最重症(30%未満)まで4段階に分類されます。この分類は治療方針の決定や予後の評価に重要な役割を果たします。定期的にスパイロメトリーを受けることで、肺機能の経時的な変化を把握し、治療の効果を客観的に評価することが可能です。

まとめ

スパイロメトリーは、息を吸って吐くだけで肺の機能を詳しく調べることができる基本的な検査です。検査から算出される肺年齢は、自分の肺の健康状態を直感的に理解するための有用な指標です。喫煙歴のある方、息切れや咳が気になる方は、ぜひ一度スパイロメトリーを受けて肺年齢を確認してみてください。早い段階で肺機能の低下に気づき、適切な対策をとることが、将来の呼吸器疾患の予防につながります。